2010年10月30日土曜日

日の入り

日の入りの時間が早くなった。

けれど日の入りの瞬間、前後30分と比べれば
それまでの時間は本当に長い。

空を見上げて西の空を見て、おおよその位置を確認して。
雲の様子を眺めながらフォーカスの中心を考えて。
海の様子を波の様子を眺めて。
風を感じて鳶やカモメの様子をうかがって。





風景撮りをやっていなかったせいか、何を切り取っていいのか
絞りやシャッタースピードや、レンズの向き1mm で変わる
明るさに躊躇した。

富士山は肉眼ではうっすらと輪郭が見える時もあったけど、
雲にすっかり隠されてしまっていた。
300mm 望遠で日の入りを大きく撮るか、広角ズームで
景色を切り取るか考えた。
日の入りの瞬間さえ雲に隠れる可能性が大きくなって、
広角ズームで景色を切り取る事に決めた。

夕日と富士山と江ノ島と海。
僕が撮りたいテーマが全てある場所、稲村ケ崎。

この日はフランスのリヨンから来たというご夫婦が
富士山を見に来ていた。
英語で富士山は見えますか?
と聞かれた。
曇っているから見えませんね(っぽく簡単な英語で)と
答えた(つもり)。
どっちの方角に見えるのですか?と聞かれたので、
江ノ島の右側に見えるはずなんです(っぽく簡単な英語で)と答えた。

手には10年ちょっと前に製造されたと思われる
コンパクトフィルムカメラがあった。
奥さんはあまり英語が得意じゃないようだけど、おそらく
僕よりちゃんと話せるのだろうな。
旦那さんは英語が得意らしく、でもゆっくりと質問を繰り返す。
フジのASA200 のフィルムが欲しいのだけど、売っていないんだ。
どこか手に入るところは無いだろうか?
ASA400 なら買えるんだけど、欲しいのはASA200 なんだよ。
こんな事を聞かれた。
何処に滞在しているのか聞いてみると新宿との事だったので、
駅の近くにヨドバシカメラという大きなお店があるのだけど、
行ってみましたか(っぽく簡単な英語で)と聞いてみた。
行ったようだが見つからなかったらしい。

30分くらい富士山の見えるはずな方角を眺めて、
ご夫婦は諦める決心をしたらしい。
見えないのにそれでもまだ待つの?そう聞かれた。
この後に素敵な夕日が見られるかもしれないから、
そう答えた(つもり)。
にっこりと笑ってご夫婦は稲村ケ崎を後にされた。
「ドモアリガト」
こう言われて何と返すか一瞬考えた。
結局ありきたりな Have a nice day. Enjoy Japan.
多分言いたかった事は伝わるだろう。きっと....
富士山が見られなかった事は残念だったけれど。

夕日の余韻を撮るには残念な空模様で早々に退散。
帰り道に信号待ちで一緒になったおとうさんは6x7 のフィルムだった。
藤沢駅まで江ノ電で写真の話を聞かせていただいた。
6時間待ってシャッター切ったのは1枚だけだそうだ。
年賀状の写真を頼まれてね、でもダメだったねぇ。
また来ますよ、1000円かかるけど。
そう仰っていた。
6時間で1枚、それはそうだ。
6x7 のフィルムは確か10枚撮り。
電化製品一眼レフの画像記録装置と違う。

APEC の開催であまり荷物を増やしたくないし、
街撮りも風景撮りも控えていたのだけど、やっぱり
時間をかけてシャッターを切れる風景撮りはいい。

鳥なりウゴキモノも真剣にやれば時間はかかる。
行動パターンの観察、撮りたい瞬間を決めるとか。
ちょい撮りのスナップとテーマを決めた写真は違うのだもの。

やっぱりテーマと時間と熱意が写真には必要だ。
なんでもそうだろうけど。

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